Welcome

インフォメーション

2026-05-06 16:31:00

マレーシア在住35年、裁判所での法廷通訳を30年近くやってきた私ですが、裁判所に学校の夏休みなどのような休暇があるということは、この4月27日のThe Starを読むまで知りませんでした。

この日は裁判所側からと弁護士側からの2つの記事がありました。

 

【裁判所側からの記事】

この記事は、マレーシアの司法制度における「裁判所休暇(Court Vacation)」について説明したもので、最高裁長官(Chief Justice)のワン・アハマド・ファリド判事が、「裁判所休暇は休暇ではなく、裁判官はその期間中も通常業務を続けなければならない」と強調した内容を報じています。 

記事によると、マレーシアでは毎年5〜6月、および11〜12月頃に「裁判所休暇」が設けられます。この期間は通常の審理や裁判の多くが停止されますが、裁判所自体が閉鎖されるわけではありません。連邦裁判所、控訴裁判所、高等裁判所の登録部門は通常通り運営され、緊急案件については当番裁判官が対応します。今回の休暇期間は6月1日から12日までとされています。 

最高裁長官は通達の中で、裁判官や司法委員は正式な休暇許可を受けていない限り、この期間も勤務を続ける義務があると明言しました。特に、判決理由書(grounds of judgment)の作成、法的調査、未処理案件の整理などを積極的に行うよう求めています。 

背景には、判決理由書の作成遅延が深刻化している問題があります。ワン・アハマド・ファリド長官は2026年法曹年度開始式典において、「判決を書くことは裁判官の本質的な職務である」と述べ、長期間判決理由を書けない裁判官に対して厳しい姿勢を示していました。判決理由が遅れると、当事者が控訴できず、不満や不信感につながるためです。 

また長官は、「10件以上の未作成判決理由を抱える裁判官は、制度全体だけでなく、自身の良心にも重荷を負っている」と警告しました。一方で、単に処罰するのではなく、判決作成に苦しむ裁判官には司法機関として支援も行う方針を示しています。 

この記事は、マレーシア司法制度が「迅速な裁判」と「判決理由の適時作成」を重視し、裁判官の説明責任と業務効率化を強く求めていることを示す内容となっています。

 

【弁護士側からの記事】

この記事は、マレーシアの最高裁長官による「裁判所休暇中も裁判官は勤務を継続する」という新たな通達について、法曹界が概ね歓迎していることを報じた内容です。 

記事によると、これまで「裁判所休暇(court vacation)」の期間中も、裁判官が判決文作成や法的調査などを行うことは慣行として存在していましたが、今回初めて正式な文書として明文化された点に大きな意義があると、複数の弁護士が評価しています。 

元副検察官でもある弁護士ザンダー・リム氏は、「裁判所休暇は司法責任が停止する期間ではなく、実際には“仕事の期間”である」と説明しています。裁判官はこの期間中に、判決理由書の作成、係属案件の見直し、法的リサーチ、最新判例の研究などを行うべきであり、これは迅速で遅延のない司法実現という司法の責務に合致すると述べています。 

また、刑事事件や商業犯罪事件では、判決理由書の作成遅延が控訴手続の遅れにつながる問題が以前から指摘されていました。高等裁判所や控訴裁判所では、書面判決が完成するまで控訴審が進まないケースも多く、今回の通達によって、未処理案件の減少や判決作成の迅速化が期待されています。 

さらに、この通達は裁判官倫理規程(Judges’ Code of Ethics)の精神にも沿うものだとされ、司法職務の優先、積極的な事件管理、迅速な判決提供という原則を再確認する意味も持っています。 

ベテラン弁護士らも、「裁判官は従来から休暇期間を利用して未処理業務を片付けてきた」と述べつつ、今回の通達は特に自己管理が甘い裁判官への良い注意喚起になると評価しています。 

最後に、元弁護士会会長クツブール・ザマン氏は、この方針により司法の説明責任と透明性が高まり、当事者が判決理由を早期に確認することで、控訴すべきかどうかを迅速に判断できるようになると指摘しています。